民進党の経済・社会政策 雇用・賃金という観点から

 民進党の代表選は、前原氏と枝野氏の一騎打ちとなっている。共産党との選挙協力の是非など、姿勢に相違するところもあるけれども、経済政策については基本的に一致する。出産・育児、教育、医療、年金などの充実と維持がそれで、ひと言で表せば「尊厳ある社会保障」ということになる。

 こうした方針のブレーンとなっているのが、井出英策・慶應義塾大学教授で、財政・金融政策の専門家である。

 井出先生の認識はこうだ。将来的に労働人口は減少する一方であり、企業の生産拠点も海外にシフトしている以上、日本がかつてのように継続的な経済成長を達成する見込みはない。

 その上で、社会には医療や福祉、老後の生活への不安や心配が広がっている。それを解消することが、これからの政策としては正しい選択だというのである。

 スタンスとしては、所得の再分配に重点を置いた「中負担・中福祉」路線。過剰な行政サービスは是正する一方で、教育・医療・福祉の基盤はしっかりと保証する。そのための財源は、消費税の税率アップなどで、財政再建も進めるというものだ。

 理屈としては非常に筋が通っていて、私もそれには共感する。しかし、現実としてそうした方向性が支持されるかどうかは別である。

 いまの20-30歳代が支持する政党は、自民党が多く、民進党などは低い。この背景には、曲がりなりにも成長戦略を進める政権与党への期待がある。彼らにとっての関心は、何よりも雇用と給与の安定、アップであって、医療や福祉の拡充はかえって負担を強いると感じやすい。

 もちろん、彼らも二十年後には違うスタンスをとっている可能性もあるけれども、党派的に「リベラル」であるはずの民進党が、特に若者から支持を得られていない点は、重く受け止める必要がある。

 なぜなら、例えばイギリスやアメリカでは、現在、保守党、共和党が政権の座にあるけれども、年齢別に支持政党の内訳を見直すと、若年層になればなるほど、それぞれ労働党民主党への支持率が高くなっている。長い目でみると、リベラル政党の巻き返しも考えられる状況なのである。

 日本の場合は、それが逆転している。消費税に対する拒否感で、景気にも悪影響をもたらしてきた我が国で、ヨーロッパ各国の税負担率との比較から、「税率アップは妥当」と評価していいものか。ここは再考の余地がある。

 民主党政権の失速や、民進党の低調については、砂原庸介『分裂と統合の日本政治』(千倉書房、2017年)でも、政策の誤りだけでなく、地方政治への浸透が進まない構造的問題が指摘されている。党内の混乱や経済政策への理解が進まないことだけが、いまの状況を作っているわけでは必ずしもない。

 ただ、現状において、経済政策や財政金融も含めた、自民党や安倍政権の方針とは異なるスタンスだけではなく、若者たちに対する雇用や賃金への不安にもまた配慮しなければ、民進党にとって「将来」を語るビジョンを示したとはいえないのではないか。

 有権者、とりわけ若い世代にとって、民進党への期待が薄いのはそうした面もあるように思われる。

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民進党・前原氏が事務所開き